相続に関わりたくないのですが、どうすればよいですか?

文責:所長 弁護士 湯沢和紘

最終更新日:2023年09月21日

相続に関わりたくないのですが、どうすればよいですか?

1 相続放棄をする理由・動機は限定されていない

 相続放棄を検討される理由は人によって様々かと思いますが、放棄をする理由や動機、経緯等は、相続放棄の要件とはされていません。

 ただし、相続放棄の申述をする際は、申述書において簡潔に理由、動機を示します。

 相続放棄を受理するか否かについては、裁判官による審査が行われます。

 この審査は裁判官の裁量によるところが大きいですが、相続放棄をする合理性および不自然な部分がない(相続放棄を強要されていないかなど)ことの確認をするものと考えられます。

 そのため、理由・動機を示すということになります。

 相続放棄をする理由・動機の典型は、次のようなものがあります。

 ①被相続人の債務超過

 ②風習などにより財産・負債を特定の相続人に集中させる

 ③生前に充分な贈与を受けている

 ④すでに生活が安定しており遺産が不要である

 なお、これ以外の理由であっても、社会通念上合理的なものであれば、通常、相続放棄は認められます。

 

2 「相続に関わりたくない」という理由も認められる

 上記の典型的な理由・動機のほか、何らかの事情により相続に関わりたくないという理由であっても、通常相続放棄は認められます。

 実務上よくある典型的なケースとして、次のようなものが挙げられます。

 何らかの事情で両親や兄弟等と関係が悪くなり、何年も前に地元を離れ、連絡も断って生活をしていたところ、親が亡くなった知らせが届いたという場合です。

 このような場合、仮に相続放棄をしないのならば、遺産分割協議が必要です。

 そうすると、家族とコンタクトをしなければならなくなります。

 無視していると、調停を提起されるということもあります。

 財産を取得するつもりがないのであれば、このような事態を避けるために相続放棄をすることは、一つの合理的な選択といえます。

 他のケースとしては、相続人の親が数十年前に離婚し、それ以来片方の親と離別して没交渉になっていたところ、その親が再婚して別の家庭を築いていたというケースです。

 相続人としても新たな家庭に踏み込みこんで迷惑をかけたくないという心理が働くこともあります。

 そのような場合に、相続放棄をして、相続関係から外れるという選択を取ることは合理的なものと考えられます。

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